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【事業計画は「任せて任さず」】事業部門責任者も巻き込みコミット可能なKPIにまで落とし込む

IPO準備における事業計画の策定は、経営者の「頭の中」を定量的に整理し、目標値や具体的な行動計画を明確にする上で重要なイベントといえます。事業計画は会社の将来像を数値という明確な面で見ることができる為、ステークホルダーにとって各種判断に役立てられる重要な資料。また、精度の高い事業計画を作成することは、上場会社にとって不可欠とも言えます。

その為、『「IPOは事業計画が命』と位置付ける企業も多いです。

しかし、

  • 外部環境が刻々と変化する中で、計画を立てることで臨機応変な判断が出来ないのでは…
  • 具体的に、どういった考え方やスタンスで事業計画を作成すれば良いか分からない…

といった意見があるのも事実。本記事では、株式会社アシロの『事業計画の策定』を主導した取締役CFOの川村悟士氏に、事業計画の策定の重要性や実際の実務について伺いました。

INTERVIEWER

Oka Takayuki 岡 隆行

弁護士専門の人材紹介サービスマーケティング責任者。人材領域新規サービス立ち上げに関わり、弁護士と法律事務所とのマッチング創出の一助を担う。

INTERVIEWEE

Satoshi Kawamura 川村 悟士

UBS証券株式会社、マッコーリーキャピタル証券会社などを経て2017年4月に当社入社、CFO就任。2018年1月より当社の取締役に就任。

CONTENTS

事業計画はオフィシャルな予算と、アグレッシブな「社内目標」を追求

ーー事業計画は当時からどこまで重要視していたか?

IPOにおいては、予実管理の正確性が最重要ポイントの一つとなります。例えば上場後に、正確な予算(業績予想)を出せずに下方修正を繰り返すような企業は投資家からの信頼を無くしてしまう為、適切な予算策定が出来ているのかは上場準備段階での大きなチェックポイントとなります。

また、事業計画は、株主などの社外関係者と役職員の社内関係者の目線合わせをする貴重な機会ですので、上場準備段階から非常に重要だと考えていました。

ーー何年先の計画まで盛り込んだか

一般的にIPOでは、3カ年の事業計画を「中期経営計画」として策定することが求められます。上場企業では5カ年の計画を立てる会社もありますが、成長性やリスクの高いベンチャーではどうしても予測精度が低くなってしまう為、「中期経営計画」は3カ年の事業計画を指すことが一般的です。

ーー策定にあたって心がけていたこと

先ほどお伝えした通り、上場後に下方修正することになった場合は大きな問題になることから、上場準備の段階から下方修正は避けることが望まれます。逆に上方修正は何回しても問題ありませんので、事業計画はある程度コンサバティブ(保守的)な計画とすることを意識しました。

とは言っても株主や経営者の立場からすると、アグレッシブな計画を求めたいというスタンスになりますし、達成できるかどうかギリギリの水準に目線を置いた方が成長の確度は高まりますので、コンサバティブな「中期経営計画」というオフィシャルな予算と、アグレッシブな「社内目標」というアンオフィシャルな予算の2つを作った上で、社内の目標値としては「社内目標」を追求することで、「中期経営計画」を確実に達成するように努めていました。

重要なのはエクイティストーリーによる強烈な成長イメージを示す

ーー単なる数値計画の羅列ではなく、背景・裏付けの明記が求められるとされますが、実際にどういった考え方で策定しましたか?

事業計画は信頼性が重要ですので、例えばですが売上がこうなるだろうと、ざっくり目算で計画を立てることはNGです。なるべく積み上げで細かく計算していく必要があります。

例えば営業一人当たり売上✕営業人員数といった形で売上が計算されるビジネスモデルだとすると、営業一人当たり売上は過去実績に基づいた数値とし、営業人員数は採用計画や人件費と紐づいた数値とすることで、売上の根拠・ロジックを固めつつ、費用とも連動させていくイメージとなります。

細かく積み上げで計算していく上では、自社の事業がどういった要素で構成されているかのKPIを見つけることが重要となります。

ーー利用したフレームワークなどがあれば教えてください

「中期経営計画」には2通りの意味があり、数字の計画値となる定量的な「中期経営計画」と、企業としての強み・弱み等を含めた分析や戦略、成長の絵姿を記載する定性的な「中期経営計画」の2つがあります。後者の「中期経営計画」を作る上で、SWOT分析的な考え方をすることもありますが、重要なことは、どのように成長していくかの絵姿を示す「エクイティストーリー」を作成することになります。

エクイティストーリーとは
投資家に向けて会社の特徴・成長戦略・企業価値の増大の道筋についての説明をするストーリー。
◼ 投資家に自社の魅力を伝え、自社の企業価値を向上させる最も基本的な手段

引用元:経済産業省|スタートアップの成長に向けたファイナンスに関するガイダンス

ーー東証の定める内容で注意したこと

上記の「エクイティストーリー」を投資家に明確に説明する為に、上場時に「成長可能性に関する説明資料」という資料を開示することが求められています。この「成長可能性に関する説明資料」の作成にあたって、東証からは「事業計画及び成長可能性に関する事項の開示 作成上の留意事項」というガイドライン的な資料が公開されています。

上記のガイドラインに記載されているコンテンツがきちんと網羅出来ているか東証からチェックいただき、必要なコンテンツが入っていないと判断されれば追記するようにコメントを頂くことになりますので、自社として説明したいことだけではなく、このガイドラインに則って必要なコンテンツを網羅できているかという点にも留意して作成を進めました。

なお、2020年以前は、「成長可能性に関する説明資料」への東証からのチェックは基本的に無く、各社が説明したい内容で資料が構成されていますので、2020年以前の「成長可能性に関する説明資料」を見本とする場合は注意が必要です。

ーー参考にした企業はあるか?

「成長可能性に関する説明資料」は各社公表されていて、本当に数多くの会社の資料を参考にさせて頂きましたので、特定の企業名は挙げづらいですが、ビジネスモデルが似ている企業はもちろんのこと、全く異業種の企業でも資料上での見せ方といった部分は参考にさせて頂きました。

ーー事業計画における成長数字の引き方について

冒頭でお伝えした通り、下方修正は避けることが望ましいので、数字は堅めで8割程度の確率では達成できると見込む数字をオフィシャルな予算としていました。ただ、根拠なく堅めの数字を入れると事業計画の前提・信頼性に関わりますし、KPI部分での予実比較も出来なくなってしまいます。

先ほどお伝えした例で言えば、売上を営業一人当たり売上✕営業人員数といった形で計算する際に、営業一人当たり売上の過去実績が例えば月額200万円だったとすると、それを割り引いた形で保守的に想定しておくイメージとなります。

また、新規事業といった確度の薄い売上は、アンオフィシャルな「社内目標」には反映しても、オフィシャルな「中期経営計画」には反映しないといった調整を行っていました。「成長可能性に関する説明資料」のページ数に縛りはありませんので、会社によってそれぞれになりますが、50ページ前後になったかと思います。

競合他社との差別化は「特化領域」「専門性」にあり

ーー市場には弁護士ドットコムという先駆者がいたが、彼らとの差別化はどう伝えたのか?

競合企業との差異は、昔から何度も質問を頂いてきたポイントです。

まずユーザーにとっては、弁護士ドットコムは総合法律ポータルサイトであるのに対して、当社の弁護士ナビは離婚や相続など分野ごとに特化したバーティカルサイトとなっている点に違いがあります。飲食店のポータルサイトを想像いただきたいのですが、例えばイタリアンで良いお店が見つからずに和食に変更してお店を探すこともあるかと思います。

一方で法律分野の場合、離婚問題で弁護士を探している際に、相続問題に切替えて弁護士を探し直すことはありませんので、複数の分野を一つのサイト内で扱うことよりも、特定の専門領域を深堀りしているサイトの方がユーザー利便性が高いと考えています。

また、顧客にとっては、弁護士ドットコムは弁護士個人単位での掲載であるのに対して、当社の弁護士ナビは法律事務所単位の掲載となっており、より高い掲載費用を頂戴している点に違いがあります。より高い掲載費用を頂戴しているという事は、サービスの運営原価に十分なお金を掛けることが出来るという事ですので、その結果としてしっかりとした広告効果を安定的に提供することで解約率が低くなり、ストック型で収益を積み上げられているという強みに繋がっていることを説明させて頂いています。

3カ年の計画は関係者の認識合わせをするという観点から十二分に意味がある

ーー再度計画の提出を言われることはあるか?

当社の場合はありませんでしたが、特定の大株主がいる場合はNGが出る可能性もあると思いますし、取締役会で予算の承認決議を諮った際に他の役員から反対意見が出て、決議を見送る会社もあるとは思います。そういった会社関係者から反対意見が出るケースは、会社の将来像への認識の違いが原因だと思いますので、特にネガティブな情報については予め共有して認識を合わせるといった根回しが重要だと思います。

また、主幹事証券からの上場審査の過程で、事業計画が積み上げで計算されていないといったような、ロジックや根拠の弱い計画であった場合には作成し直しが求められると思います。また、例えばコロナ禍といった外部環境の大きな変化が起こり、事業計画にその影響が織り込まれていない場合には、事業計画の修正を求められることになると思います。

ーー定期的な計画の見直しはあるかと思うが、最初はどのくらいの時間をかかけたのか

3カ年の中期経営計画は、毎年の事業年度末に見直しして、ローリング予算を作成することが通常です。例えば12月決算の企業の場合、2020年の年末に2021年、2022年、2023年の計画を作って、2021年末に2022年、2023年、2024年の計画を作る(2022年、2023年の数字を見直して、2024年の数字は新たに作る)イメージとなります。

作成に必要な期間についてですが、事業計画の作成にあたっては各事業部門の協力も不可欠となりますので時間に余裕を持って進めることが望ましいものの、一方でなるべく直前に作った方が将来に向けてより確かな見立てができますので、2ヶ月程度で作成を進めることが良いのではと考えています。

ーー3年先・5年先の計画を立てることに意味はあると思うか

成長性が高いということは、その分、業績の振れ幅も大きいということですので、数年先の計画を立ててもその計画値通りに推移する可能性は低いと思います。一方で、例えば3年後の売上を10億円と予想して、実際は12億円や8億円になることがあったとしても、倍の20億円や半分の5億円といった数字になる可能性は低いと思われますので、どういった会社になっていくかの絵姿を作り、関係者の認識合わせをするという観点から作成する意味は十分にあると考えています。

また、数年先の計画を作ることで、実際に数年後の段階で、どういった要因で計画と実績の違いが生じているかを把握できるようになりますので、その要因を把握して事業計画の精度を高めていくことも可能になります。

私自身、入社初年度に作成した事業計画は実績との乖離が大きくなってしまい、そこから学ぶことが多かったので、違いが出ることは前提として、恐れずに3カ年程度の計画作りを行って頂ければと思っています。

各事業部門の責任者も巻き込み、コミットできるKPIにまでブレイクダウンする

事業計画を作る上で、代表やCFOがKPI数値の予算を作っていくのではなく、そのKPIの達成責任がある各事業部門の責任者にその部分の予算づくりは任せた上で、出てきた予算を見て代表やCFOからコメントを行い、ボトムアップとトップダウンの両方で折り合えるポイントを探すことが事業計画づくりでは重要だと考えています。

各事業部門の責任者が過度に保守的な計画値を出してきた場合は指摘する必要がありますし、逆に強気な計画値が出てきた場合、「これだけやれると言うのであれば、任せてみよう」という判断になってしまいがちだと思いますが、その根拠等を十分に確認せずに承認することは、結果的に計画と実績が大きく乖離する要因になりかねず危険だと思います。

恥ずかしながら先ほどご説明した、私が入社初年度に作成した事業計画が実績との乖離が大きくなってしまったのは、事業部門の責任者が達成できると考える数字を『疑うことを疎かにした』ことが要因でした。松下幸之助氏の名言の中で、「任せて任さず」という言葉がありますが、事業計画づくりにおいては「信じて信じず」というスタンスが大事だと考えています。

事業計画の作成は大きな労力が掛かりますので、トップだけで作ってきた会社も多いと思いますが、各事業部門の責任者も巻き込んで彼らがコミットできるKPIにまでブレイクダウンした事業計画を作ることで、会社の予算と各部門・各個人の目標値が合ってくると思います。

ぜひ全社で事業計画づくりに取り組んでいただいて、その上で全社で目標達成することで、より一段と強い組織を作って頂くことが出来るのではと思います。

株式会社アシロ ASIRO.inc

概要
離婚弁護士ナビ、交通事故弁護士ナビなど、法律・弁護士業界とインターネットを結びつけた事業を展開。
上場
2021年東証グロース市場上場(証券コード:7378)
理念
アシロに関わる人を誰よりも深く幸せにすることでよりよい社会の実現に貢献する。
IR資料
https://asiro.co.jp/ir/

IPO STORY 株式会社アシロのIPOストーリー

上場のキッカケ

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N-1期

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